十五年目のオッパイ
十五年目のオッパイ
十六歳の時、友達の家へ遊びに行っていた時のことである。私は彼の家の庭で、なぜか一人で居たのだが、その時、彼の姉さんが風呂に入っていて、急に、風呂場の小窓を10センチほど開いて、何か私に話しかけたのだ。
彼女は細面の美人だった。細く開いた小窓から、彼女の白い胸の谷間がのぞいて見えた。だが、その両側の乳房は残念ながら見えなかった。私はムラムラとして、衝動的にその窓を引き開けたくなった。
その晩、私は彼女の夢を見た。暗闇の中に彼女は全裸で立ち、私の方へ向いて、手招きをした。しかし、その全身はぼやけて、はっきりと、その乳房は見えなかった。
私はもっとよく見ようとして、一歩前へ出ようとした。すると、急に、その白像は霧のように崩れて行き、消えてしまったのだ。思えば、その夢は強烈な印象だった。
さて、それから十五年の歳月が流れた。ある時、私は信州の山の中の小さな温泉へ行った。露天風呂へ入ろうとした時、その入口の右手に、小さな家族風呂の入口があるのを見た。
ふと興味を覚えて、その戸を開けてみた。すると、そこに彼女が居たのである。あたかも、かつての私の願望に答えるように、彼女は全身を晒して、私の前に正座していた。
私は彼女と向き合ったまま、数分間、思い出話をした。「では、またあとでお会いしましょう」そう言って、その扉を閉じたあと、再び会っていない。思えば夢のようである。
四十年を超える歳月の中で、私はたった一回だけ、彼女に再会した。それも、ほんの数分間だけ。しかも全裸で。私の夢にまで見ようとしたあのオッパイは、確かに、私の眼前に登場したのである。そして、一瞬のうちに、それは永遠の彼方へ消え去った。
あたかも阿頼耶織に刻みつけられた因が、果となって、そこに結ばれたように・・・。