欲望のコントロール
欲望のコントロール
人生における「成功」、あるいは端的に言えば「蓄財」は、毎日の食欲と似ている。その欲望は、空腹感のように、毎日、折りに触れては、意識の中に、自動的に湧き起こってくるのである。
そして、この精神的空腹感こそ、成功や蓄財を可能にする原動力なのである。いわばそれは、生命の生きる力そのものと言ってもいい。考えようによっては、人間を生かしている「命の炎」なのかも知れない。この炎に燃えている故に、我々は活力に溢れているのかも知れないのだ。
言うなれば、食欲ある故に、食べ物を求め、食べ、肉体生命に生きる力を得ているように。だとすれば、成功に対する意欲は、我々人間にとっては有り難いもの、貴いもの、そして、聖なるものですらあり得る。しかし、この精神的空腹感は、次の点も本当の食欲とよく似ているのだが、それはとかく食欲になりがちであり、食い過ぎて、健康を害してしまうことが非常に多いのである。
しかし、本物の食欲も、食事は腹八分目に控え、しばらく時間を置いていると、脳内の満腹中枢が働き、空腹感はおさまり、満ち足りた感じになるのである。これが、腹十分目まで食べてしまうと、後できっと食い過ぎた感じとなってしまうのだ。
以上は、養生訓を書いた貝原益軒もそう言っている。精神的食欲も同じである。食欲の命ずるままに、ガツガツと食い続けると、きっと食い過ぎという悪い結果を招くことになろう。そして、いずれは身を誤るもととなるのだ。