見ざる聞かざる言わざる
見ざる聞かざる言わざる
テレビを見ていたら、中年の女たちが、お互いの悪口を言い、攻撃しあっている。また、画面には出て居ない相手の女を、こきおろしている有名な女も居る。最近、テレビには、こんな番組がどうも多い。「熱女のバトル」というのだそうだ。
熱女というのは、「年齢を食った女」を、少々上品に表現したものであろう。下品に言ったら、「パパアの喧嘩」だ。これでは、ミもフタもない。ただ、テレビを見ているかぎり、結構おもしろく、いつのまにか、どちらかの有名女性の肩を持ち、敵対する相手の方を「間違っている」などと思ったりして、自分もその争いに感情移入してしまい、怒ったり笑ったりしている自分に気がつく。
ある時、テレビの画面のその女性たちの顔が、瞬間的ではあるが、非常に良くない表情をしていることに気がついた。総じて、皆美人ではあるが、陰惨とも思える暗い表情が現れる。ふと、気がついた。テレビを見て、それらの場面に感情移入している私の顔も、そんな否定的な表情になっているのではあるまいか、と。
「これはまずい」と私は思った。マスコミ情報に、私の感情が踊らされ、怒り、恐れ、不安などのマイナスの気分に引き込まれることは、私の阿頼耶識の内部が灰色に汚されているようなものである。
私は、「見ざる聞かざる言わざる」の古い格言を思い出した。気分が悪くなるような情景は見ないことだ。また、そういう話題を聞かないことだ。そして、また、話題として、話さないことだ。私は、すぐさまチャンネルを他に切り替えた。