天国と地獄
天国と地獄
これは寓話である。ある不運な男がいた。何をしても失敗つづき。さっぱりうだつが上がらず、女にも全然もてない。悲嘆にくれた彼は神に訴えた。「神さま。どうして、あなたは私をこんな不遇な目にあわせるのですか?これでは、私の居るところは、まるで地獄です」すると、神が現れて、彼に聞いた。
「お前は何が望みなのだ?」彼は言った。「すべてです。すべての望みが叶うことです。私の人生は何一つ望んだことが叶った試しがありません。だから何でもかんでも叶って欲しいのです」「具体的に言って、何が欲しいのだ?」
「まず、おカネです。使い切れないほどの大金です。それから女です。今まで、どの女も、私に目もくれませんでした。そして健康と長寿です。これらのすべてが得られたら、この世はまさに天国です。
どうか神さま。この世の天国を私にお与えください」神は答えた。「よろしい。お前の望みを叶えてやろう。しかし、一旦叶えたら、その望みを変更することは出来ないぞ。それでもいいか?」「もちろん、それで結構です」
それからの彼は物凄い幸運な男となった。商売をすれば、いつも大成功をし、大金が洪水のように流れ込んできた。ビルや邸宅、別荘がどんどん建築された。競馬に行けば、いつも大穴が当たり、外れることは決してなかった。
買った株は全部が暴騰した。道ですれ違う女に口笛を吹くと、すぐついて来て、ラブホテルへ同行し、サービスの限りを尽くした。何をしても失敗することがないので、そこにはなんのスリルがないため、男はだんだんつまらなくなってきた。
どのような大金が入ってきても、なんの興奮も感じられなくなってきた。もはや、人生そのものが無味乾燥だった。男は生きているのがいやになり、自殺した。しかし、すぐ生きかえってしまうのだ。
何回死んでも生き返ってしまう。なぜなら、彼は永遠の命を得ているからだ。遂に男は叫んだ。「ここは天国じゃない。地獄なんだ!」