無事是貴人
無事是貴人
「無事是貴人」とは、「つつがなく暮らしている人は、それだけで貴い人である」という意味です。しかし、「無事」という意味には、「変わったことがない。ひまなこと」という意味もありますが、これでは困ります。
そこで、この「無事」は「大自然の機能が円滑に働いている中に生きていること」というように考えられましょう。私は、この場合の「貴人」とは、「天寿を全うした人」という意味にも解せると思います。とすれば、いかに優れた人物であっても、短命であったり、人に殺されたりした人は、この貴人の範疇には入りません。
信長は光秀に裏切られ、殺された故に、貴人ではありません。その点では、家康は貴人ということになります。私は、歴史上のいかなる有名な人物でも、天寿を全うし得なかった人の評価は、五割以上割引きすることにしております。
したがって、桶狭間で快勝した信長は天才的な武将ではあったとしても、貴人とは言い難く、この点、個人的にも、社会的にも、彼の生き方を模範とすることには危険が伴うと考えております。